Small "Sob" Stories about My English     Hamamatsu English School
 
英語と出会って半世紀。 神保昌幸の「英語と私、ちょっと切ない話」… 
 
   
     

仕方なく…

> 動詞 / 助動詞 must / 時制と相 / 前置詞 /

言葉の配列には、決まりごとがある。英語の場合、そのひとつが、「主語が一人称で、動詞が『試験を受ける』というような場合、主観的な義務感を表す must を使うことはできない」という制約だ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「明日は会えないよ。試験を受けなくちゃならなくて」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        I can't see you tomorrow: I must take an exam.

上記の配列のままでは、「明日は会えないよ。試験を受けなくちゃならないという思いが(いつも)あるから」といった不自然な内容になる。正しくは、「明日は会えないよ。(今は)試験を受けなくてはならないことになっているんだ」といった内容になるよう、次のように配列する。

l        I can't see you tomorrow: I have to take an exam.

言葉の配列についての決まりごとは、その習得に際し、決まりごとの内容や、従事する言語活動において求められる技能などによって対応が異なる。

この制約では、思考や感情を汲み取ろうとして、読んだり、聞いたりするといったような場合、あるいは、それらを伝えようとして、書いたり、話したりするといったような場合、制約の背後にある規則性に目を向け、他の決まりごとと関連付けながら、表現の仕組みについて理解を深めていくことになる。

その「他の決まりごと」のひとつが、中学校で学ぶ「前置詞」についての制約のひとつで、「前置詞の共起において、for ... to の語順になってはならない」というものだ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「彼は、リリーのことを考え、アギーにそれをやった」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        He gave it for Lilly to Aggie.

上記の誤った配列では、「彼は、リリーのせいで仕方なく自らアギーにそれをやった」といった不自然な表現になる。正しくは、次のように配列する。

l        He gave it to Mary for Lilly.

何がどうなっているのか、決まりごとの中には習得にひどく手古摺(てこず)るものがある。あれこれ工夫してみるが、途方に暮れることが珍しくなく…ちょっと切ない。

   
   
     
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