Small "Sob" Stories about My English     Hamamatsu English School
 
英語と出会って半世紀。 神保昌幸の「英語と私、ちょっと切ない話」… 
 
   
     

口に出す前に…

> 間接目的語構文 / 受身形 / 代用形 so /

言葉の配列には、決まりごとがある。英語の場合、そのひとつが、「二重目的語構文の間接目的語が受益者の意味役割を持っている場合、受動化により主語にすることはできない」という制約だ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「リリーは、このドレスをアギーに仕立ててもらった」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        Lilly was made this dress by Aggie.

上記の配列では、「リリーはアギーによってこのドレスにされた」といった不自然な内容になる。正しくは、次のように配列する。

l        Lilly got Aggie to make this dress.

また、「このドレス」を主語にするときは、次のように配列する

l        This dress was made for Lilly by Aggie.

l        This dress was made by Aggie for Lilly.

言葉の配列についての決まりごとは、その習得に際し、決まりごとの内容や、従事する言語活動において求められる技能などによって対応が異なる。

この制約では、思考や感情を汲み取ろうとして、読んだり、聞いたりするといったような場合、あるいは、それらを伝えようとして、書いたり、話したりするといったような場合、制約の背後にある規則性に目を向け、他の決まりごとと関連付けながら、表現の仕組みについて理解を深めていくことになる。

その「他の決まりごと」のひとつが、中学校で学ぶ「代用表現」についての制約のひとつで、「文代用形の so は、副詞節内で用いることはできない」というものだ。

文代用形の so とは、「あなたはなぜそう思うのですか」という内容を表そうとして下記のように使われる副詞のことだ。

l        Why do you think so?

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「リリーは、アギーが(リリーの出発を)口に出すより前に出発した」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        Lilly left before Aggie said so.

上記の誤った配列では、「リリーは、アギーがそういったことを口に出す前に出発した」といった不自然な表現になる。正しくは、下記のように配列する。

l        Lilly left before Aggie said.

l        Lilly left before Aggie said she (= Lilly) would (leave).

また、「リリーは、自分が…」という内容を表す場合、「主節中の文代用形 so は、従属節中にある先行詞に先行することはできない」という制約があり、下記のように配列することはできない。

l        Lilly did so before Aggie said she would leave.

何がどうなっているのか、決まりごとの中には習得にひどく手古摺(てこず)るものがある。あれこれ工夫してみるが、途方に暮れることが珍しくなく…ちょっと切ない。

   
   
     
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