Small "Sob" Stories about My English     Hamamatsu English School
 
英語と出会って半世紀。 神保昌幸の「英語と私、ちょっと切ない話」… 
 
   
     

小学校教師の…

> 助動詞 must / 代名詞 /

言葉の配列には、決まりごとがある。英語の場合、そのひとつが、「述語で表される出来事が起こらないことを話し手が認めている場合、義務を表す must を使うと非文になる」という制約だ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「アギーは来なければならないが、きっと来ないだろう」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        Aggie must come, but she won't.

上記の配列では、「アギーが来なくていいとは到底思えなくて、それでいて来るとは到底思えない」といった不自然な内容になる。正しくは、次のように配列する。

l        Aggie ought to [should] come, but she won't.

言葉の配列についての決まりごとは、その習得に際し、決まりごとの内容や、従事する言語活動において求められる技能などによって対応が異なる。

この制約では、思考や感情を汲み取ろうとして、読んだり、聞いたりするといったような場合、あるいは、それらを伝えようとして、書いたり、話したりするといったような場合、制約の背後にある規則性に目を向け、他の決まりごとと関連付けながら、表現の仕組みについて理解を深めていくことになる。

その「他の決まりごと」のひとつが、中学校で学ぶ「代名詞」についての制約のひとつで、「代名詞と先行詞が同一名詞句内にある場合、同一指示はできない」というものだ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「トマスは、本人が写っている(女性の)小学校教師の写真が気に入っている」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        Thomas likes the grade-school teacher's picture of her.

上記の誤った配列のままでは、「トマスは、彼女―写真の所有者である女性の小学校教師とは別の、文脈から特定できる女性―が写っている(女性の)小学校教師の写真が気に入っている」という内容になる。正しくは、下記のように配列する。

l        Thomas likes the grade-school teacher's picture of herself.

何がどうなっているのか、決まりごとの中には習得にひどく手古摺(てこず)るものがある。あれこれ工夫してみるが、途方に暮れることが珍しくなく…ちょっと切ない。

   
   
     
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