Small "Sob" Stories about My English     Hamamatsu English School
 
英語と出会って半世紀。 神保昌幸の「英語と私、ちょっと切ない話」… 
 
   
     

オペラの…

> 数量詞 / 間接目的語構文 / 冠詞 /

言葉の配列には、決まりごとがある。英語の場合、そのひとつが、「主語の場合と異なり、直接目的語や間接目的語の名詞句から all, both, each  などの数量詞浮遊―名詞句を修飾していた数量詞が、副詞となって文中の色々な位置に現れること―は、不可能である」という制約だ。

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「先生は、すべての学生を褒めた」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        The teacher has praised the students all.

上記の配列のままでは、「先生は、生徒たちを褒めたが全員だった」といった不自然な内容になる。正しくは、次のように配列する。

l        The teacher has praised all (of) the students.

この制約は、主語の場合には適用されないため、「先生たちすべては、すべての学生を褒めた」という内容を表そうとして、次のように配列することができる。

l        The teachers have all praised all (of ) the students.

また、名詞句が直接目的語や間接目的語であっても、数量詞や構文によっては、数量詞浮遊が可能な場合がある。

l        I gave the boys both a hundred yen.

l        He called the men all dishonest.

l        I persuaded the men both to leave.

言葉の配列についての決まりごとは、その習得に際し、決まりごとの内容や、従事する言語活動において求められる技能などによって対応が異なる。

この制約では、思考や感情を汲み取ろうとして、読んだり、聞いたりするといったような場合、あるいは、それらを伝えようとして、書いたり、話したりするといったような場合、制約の背後にある規則性に目を向け、他の決まりごとと関連付けながら、表現の仕組みについて理解を深めていくことになる。

その「他の決まりごと」のひとつが、中学校で学ぶ「所有形」についての制約のひとつで、「二重属格における属格名詞は、人を表す定名詞句以外であってはならない」というものだ。

二重属格は、下記のように、前置詞 of による所有形と 's による所有形が共起する形式のことだ。

l        a friend of Bill's

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、下記のようにすることはできない。

l        an opera of a composer's

l        a funnel of the ship's

上記の誤った配列では、「(ある作曲家の)すべてといってもその実体がはっきりしないオペラのうちの確かなひとつ」や「あの船が自ら所有する煙突のうちのひとつ」といった不自然な表現になる。正しくは、次のように配列する。

l        an opera of the composer's

l        a funnel of the ship

何がどうなっているのか、決まりごとの中には習得にひどく手古摺(てこず)るものがある。あれこれ工夫してみるが、途方に暮れることが珍しくなく…ちょっと切ない。

   
   
     
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