Small "Sob" Stories about My English     Hamamatsu English School
 
英語と出会って半世紀。 神保昌幸の「英語と私、ちょっと切ない話」… 
 
   
     

贈り物として…

>名詞 / 限定詞 / 定冠詞 / 疑問文 / 現在完了形 / 時制と相 /

言葉の配列には、決まりごとがある。英語の場合、そのひとつが、「定名詞句内の要素を疑問詞化すると、非文になるか、非文になる可能性が高くなる」という制約だ。

定名詞句内の要素とは、下記の配列の場合、リリーの(所有する)写真に写ったアギーのことだ。

l        Lilly's picture of Aggie

この制約に反することなく言葉を配列しようとすると、「リリーの写真であなたはいったい誰を目にしたのか」という内容を表そうとして、下記のようにすることはできない。

l        Who did you see Lilly's picture of?

正しくは、次のようにする。

l        Who did you see in Lilly's picture?

言葉の配列についての決まりごとは、その習得に際し、決まりごとの内容や、従事する言語活動において求められる技能などによって対応が異なる。

この制約では、思考や感情を汲み取ろうとして、読んだり、聞いたりするといったような場合、あるいは、それらを伝えようとして、書いたり、話したりするといったような場合、制約の背後にある規則性に目を向け、他の決まりごとと関連付けながら、表現の仕組みについて理解を深めていくことになる。

その「他の決まりごと」のひとつが、中学校で学ぶ「現在完了形」についての制約のひとつで、「現在完了形は、ある一定の定名詞句とは共起できない」というものだ。

l        I have received the new pen as a gift.

上記の文法的に誤っている配列は、下記のように、現在完了形の代わりに過去形を用いるか、定冠詞の代わりに不定冠詞を用いることで文法的に正しい配列になる。

l        I received the new pen as a gift.

l        I have received a new pen as a gift.

上記の場合、現在完了形の代わりに過去形を用いると、「私は、その新しいペンを贈り物としてもらった」となり、意味不明なところはない。

また、定冠詞の代わりに不定冠詞を用いると、「私には、新しいペンを贈り物としてもらうというようなことがあった」となり、同様に、意味不明なところはない。

いっぽう、現在完了形と定名詞句が共起しているような場合、その内容は、「私には、その新しいペンを贈り物としてもらうというようなことがあった」となる。

問題は、「その新しいペンを贈り物としてもらうというようなこと」の意味が―客観的に―不明なことだ。現在完了形によって過去の具体的な出来事や状態を客観的に表すことはできない。

定名詞句内の要素の疑問詞化については、すべての場合で不可能というわけではない。下記の場合、定名詞句内の要素を疑問詞化して、「あなたが(その)発展を目の当たりにしたのはどこの都市だったのか」といった内容を表すことができる。

l        Which city did you witness the development of?

l        Of which city did you witness the development?

しかし、下記の配列では、定冠詞が付いている定名詞句という点では上記の場合と同じだが、「あなたは、どこの都市出身のあの(都市出身の)女性と会ったのか」といった不自然な内容となり、定名詞句内の要素を疑問詞化することはできない。

l        Which city did you meet the woman from?

l        From which city did you meet the woman?

何がどうなっているのか、決まりごとの中には習得にひどく手古摺(てこず)るものがある。あれこれ工夫してみるが、途方に暮れることが珍しくなく…ちょっと切ない。

   
   
     
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